君の木の下

夫婦と子どもふたりの日常備忘録

クリスチャン・ボルタンスキーと塩田千春

先週の土曜日は夕方から六本木へ出かけ、美術館をはしごしてきた。とても楽しかったので記録を残しておく。f:id:kinoshita-kinoshita:20190719231951j:plain

 

 

 

『クリスチャン・ボルタンスキーLifetime』@国立新美術館

フランスの現代アートの作家、クリスチャン・ボルタンスキーの回顧展が現在行われている。

これは結構前からチェックしていて、大木くんと「行こう」と約束していた。

 http://www.nact.jp/exhibition_special/2019/boltanski2019/

 

クリスチャン・ボルタンスキーの作品をわたしが初めて見たのは、3年まえの十月、香川の豊島で、瀬戸内国際芸術祭の展示作品としてだった。

榊が自生する神秘的な森の中にたくさんの風鈴が設置されていて、木漏れ日の中で儚げな音がいくつも重なっていた。あの時見た作品の中で最も印象的な忘れられない作品である。

 

そして、わたしはその芸術祭の中で大木くんと知り合った。二人とも芸術祭目当てで香川に来ていて、泊まっていたゲストハウスが同じだったのだ。

その時ともに讃岐うどんを食べ連絡先をゲットしたわたしは、当時住んでいた千葉に帰ってから東京の大木くんに連絡を取り、ランチの約束を取り付けた。その時は昼食を共にする以上のプランはわたしは用意していなかったのだけれど、ごはんを食べているときに大木くんが、「今ちょうど恵比寿でクリスチャン・ボルタンスキーの個展やってるから見に行きませんか」と誘ってくれたのだ。

かくして我々はなんかちゃんとしたデートみたいに美術館へ出かけ、現代アートを一緒に楽しんだ。あれが始まりだったのだ。

と思うと、必然、クリスチャン・ボルタンスキーはわたしの中でいろんな意味で特別な作家となった。だから今回、すごく楽しみにしていた。

 

 

今回はクリスチャン・ボルタンスキーの初期のころからの作品をずらりと眺めることができる。

中盤は、祭壇のような、死を連想させる作品がたくさん並ぶ。一時期は取りつかれたようにこの連作を作っていたようだ。

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来世の入り口。

死んだら大木くんとここで待ち合わせしよう。

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カナダの雪の中に設置された風鈴の作品。観客は映像を見て、現地で鳴り続けているか、もしくは朽ち果てている風鈴に思いをはせる。

大変満足して美術館を出た。

でもあの島で見た作品がやはり忘れられない。やはりアートも「生」が一番だと思う。

 

ラ オリーバ(スペイン料理

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美術館の近くで腹ごしらえ。

カウンターにどんと置かれた生ハム(塊)を店員さんがスライスしてくれるよ。

https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13137533/

 

『塩田千春展:魂がふるえる』@森美術館

これはせっかく六本木に行くので、と調べてたまたま見つけた個展だったのだけど、結構有名な方だったようだ。夜9時前についたのに結構にぎわっていた。外国人のお客さんもとても多い。

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/shiotachiharu/

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のっけから圧倒される。

素材は毛糸のようだが、このように細かく編んであって、まるでヒトの体内にいるかのような感覚になる。床に設置してあるのは小舟の形をした金属製のオブジェ。

小舟、という不安定感と母の胎内のような安心感やエネルギーを同時に感じる。

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こちらは火事の後のようなモノクロの作品。ピアノも、周辺に並べられた椅子も焦げている。強烈に死を連想させる。

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天井から吊り下げられたたくさんの旅行鞄。

いくつかの鞄は、モーターを入れてあるらしく、ところどころでコトコトと鞄が揺れている。鞄たちの下に入ってみると、それらの音は足音のように響く。

 

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「天国の入り口にぞろぞろ向かってるみたいだね」とわたしが感想を述べると、

「天国の入り口ってこんなに混んでるの? パスポートにスタンプ押されたりするのかな」と大木くんも返してくれた。

「そう。ビザもチェックされるよ。ビザがなかったら入国できないからね。『ビザがない!違うんです!取得したはずなんです!』とか言って」

「『あなたは地獄行きです』」

茶番を始めるとちゃんと乗ってくれた。

 

鞄の群れは、当然ながら会場の隅で途絶える。彼らはどこに行ってしまうのか。

 

 

 

楽しかったので出口の前から逆走し、もう一度全部見た。

帰りの電車の中でも、わたしはしきりに「楽しかったね」を連発していた。

 

 

大木くんと美術館へ行くのが好きだ。

新しく買ったばかりのワンピース、いつもより濃いめの口紅。そうやっておしゃれしてデートできることもひっくるめて、六本木の美術館は楽しい。