君の木の下

夫婦と子どもふたりの日常備忘録

寝る前のおはなし

ふみちゃんが、寝かしつけの際に「寝れない」と言う。

「じゃあ、なにかお話してあげよう」

わたしは物語りをすることにする。

昔々あるところにおじいさんとおばあさんが? いやいや、主人公はふみちゃんで。

 

ちょっと冒険っぽいものがいいかなと、こんな出だしに。

「ある日、ふみちゃんはひとりでお家を抜け出して遊びに出かけました。」

 

でも本当にひとりで出かけられたら困るな。ふみちゃんもひとりは怖いよな。お友だちと遊ぶことにしよう。

 

それで、お花畑で知らない女の子と出会い、お家に招待される展開にしてみたが、いくら相手も子どもとはいえ、見知らぬ人についていくのはだめだろう、ふみちゃんが真似したらどうなるんだ、、などと考えながら話していたら、女の子のお家で食べきれないくらい大量のお菓子でもてなされ、オバケみたいにたくさん食べた女の子はお腹が風船みたいにふくらんでいき、とうとう、パァーン! と破裂してしまう、というチャーリーとチョコレート工場みたいな展開になった。

 

やばいこれじゃホラーだ、と慌ててお花畑に戻り、お母さんとお父さんが迎えに来て、女の子の家も見えなくなった、あれは夢でした、と無理やり夢オチに持っていったけれど時すでに遅し。

おしまい、と言ってふみちゃんの顔を見ると、聞き終えるまでなんとか我慢していたふみちゃんは、こらえきれず声を上げて泣き出してしまった。

 

失敗だ。ふみちゃんはますます眠れなくなってしまった。

 

 

翌々日。

性懲りもなく「寝れない」「なんかお話して」というふみちゃん。

 

よし、今日こそは、とわたしも意気込んで、空を飛ぶ話にしてみた。

ふみちゃんが庭でシャボン玉を作って遊んでいるところに、大きな鳥がやってきて、「僕にもかして。シャボン玉をやらせてくれたら、一緒に空を飛んであげる」と言う。

ふたりは手を繋いで大空を飛び、海を眺めて、夕方暗くなる前に帰りましたとさ。

これなら怖くなかったろう、とふみちゃんを見ると、またもや今にも泣き出しそうに目を見開いて、眉根をしかめている。

「ええっ。怖かった? どこが?」

と聞くと

「とり!」

と怒ったように答えるふみちゃん。

鳥の妖怪に、空の果てまで連れ去られるイメージで聞いていたのかもしれなかった。

 

 

そして今日。

またもや「お話して。」。

うむむ。今日こそは怖がらせないぞ。

3度目の正直。今日はようやく「楽しかった」という感想を引き出せた。

 

結局、ふみちゃんの好きなものである恐竜を使ったのだ。

ジュラシック・パークのように、恐竜を再生させ、サファリパークが実現した世界を舞台とした。(ふみちゃんが好きな草食や魚食の恐竜しかいない世界にした。)

家族でサファリバスに乗っていろんな恐竜を見に行くお話、象使いのような職員のガイドで、ふみちゃんとわたしのふたりでトリケラトプスの背中に乗ってお散歩するお話、サファリバスの窓から餌をあげると、スティラコサウルスの親子がふみちゃんの手からゆっくりむしゃむしゃと葉っぱを食べてくれるお話、の3本立て。

 

3つとも、話し終えると「面白かった」ではなく「楽しかった」と笑ってくれたのがうれしかった。空想の中で同じ世界に来てくれて、一緒に楽しめた感じがして。

 

それにしても、3歳半。もう絵がなくても耳で聞くだけで物語が理解できるのだな、とそれも驚きだった。