君の木の下

夫婦と子どもふたりの日常備忘録

魔法の絨毯

うちは転勤族だったから、いつも通りすがりのお客さん気分だった。

 

わたしにとって初めての引っ越しは7歳の時だ。そこから流浪の人生が始まった。

あの町にはもう20年以上行っていない。

このあいだ、グーグルアースで見てみたけれど、家の向かいの田んぼがなくなって住宅地になっていた。裏庭にこっそり植えて、数十センチまで成長した枇杷の木はどうなっただろう。さすがにそこまではグーグルでも知ることができない。

 

次の引っ越しまではたったの2年だった。よくある話だが、家を買ったとたんに父の転勤が決まった。だから買った家には住むことなく引っ越した。

わたしは4年生になっていた。数年たったら買った家に戻れるのだと聞いての転校だった。

そのころからなのだと思う。「そのうちこの土地を離れる。だからどうせこの人たちとも別れる」という意識を持ちながら生きるようになったのは。

友達はできたが、構えずに何でも話せる相手はついにできなかった。「どうせまた引っ越すしここで頑張らなくてもいいや」という考えは、慰めにも諦めにも作用した。

 

5年弱して、ようやく次の引っ越しとなった。これが父の最後の転勤となる。以前買った家に戻ることになった。

引っ越してひと月ほどで中学校の修学旅行に行った。仕方がないので、まだ親しくない子たちのグループに入れてもらった。

一年後、中学を卒業したわたしは都会の高校に通うことになった。通学に片道2時間。平日も休日も塾とバイトに明け暮れ、家には寝に帰るだけ。当然地元意識は育たなかった。

初めの頃は地元の国立大学くらいに進めればいいかと考えていたが、周りの子たちは京都や東京の大学を目指していた。自然と、自分も卒業したらこの県を離れるのだなと考えるようになった。

 

そして東京に来た。一時妹のいる横浜に身を寄せたり、就職で数年間千葉に住んだりしたが、結婚のため今はまた都内に住んでいる。

マンション暮らし。周囲に知り合いはいない。

この町の市民だという意識はない。

一人か二人世帯向けの部屋なので、子どもができたら引っ越すだろう。そしてまだ家を買う気はないので、次の場所へ引っ越しても、数年したらきっとまた引っ越すことになるだろう。

 

次はどこへ行くことになるだろうか。

住みたいと言えるほどの街は特にない。お互いの職場の中間くらいで駅からそう遠くなければ。その程度だ。

じゃあ、わたしはどこに住みたかっただろう。これまでに住みたかった、住み続けたかった町はあるだろうか。

しかしこれまでの人生を振り返ってみても、やはり特にない。

どこにいてもお客さん気分だったから、そこが自分の町だとは思えなかったのだ。少しばかり愛着を持った土地でも、引っ越しが決まった途端にどうでもよくなった。

住んでいるときは特別なものだと感じていた、趣のある小道や小さな庭園、桜並木の風景も、引っ越してしまえば「どこにでもある風景」でしかなくなるのだ。

 

いつまで引っ越しを繰り返すのだろう。

いつまでお客さんのままなのだろう。

 

きっと家を建てても、「東京の人間になった」という思いを持つ日は来ないと思う。ここはわたしの街ではない。置かせてもらっているだけ。

でも、帰る町もない。

 

 

ただ、そのことをわたしはそんなに悪いことだとは思っていない。

いつでも、嫌になったら出て行くし、気に入ったらそこへ行く。そうやって軽やかに生きていけると思っている。

あとに何も残らなくても。

 

それに、今は大木くんがいる。

どの街だろうと、二人でいれば、そこが帰る場所になりうる。

例えていえば、『アラジン』みたいに、わたしと大木くんは魔法の絨毯の上に二人でちょこんと座っているのだ。どんな町の上空を飛んでいても、この小さな絨毯がわたしの居場所なのだと思う。

 



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写真は今日のお昼ご飯。

チンゲン菜のクリームパスタ。

牛乳とクリームチーズを使っている。

「いつもの和えるだけのパスタソースとは違うね」と大木くん。いつもすまないね。

しかし今日のは本当においしかった。大木くんからも「おいしかったー」と好評をいただいた。

 

またこういうの作ろう。

居場所は積極的に守らねばね。

 

 

 

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この1か月の備忘録

前回のエントリーからひと月がたってしまった。

書きたいことはいくつもあったけれど、今さら何を書こうか迷う。

 

ブログはインターネット上で不特定の人に発表するものであるから1記事1テーマであるべきなんだろうけれど、やはり自分用の備忘録としてなるべく多く書き留めておく。

 

 

  • 台風でマラソン大会が2つとも流れたこと

10月はハーフとフルのイベントや大会に一つずつ申し込んでいたのだけれど、いずれも台風19号と、そのあと千葉の大雨によって、中止になってしまった。

悲しい。

払った金額は、合わせて約1万円……。

でも、大会運営に携わる方々の方が悲しかっただろうから、何も言えない。あとは参加賞の郵送を待つだけだ。

仕方がないので休日に自分で長距離を走り練習している。10月は128km走った。あとは再来週の富士山マラソン当日の天気のよさを祈るのみ。どうかベストコンディションで走れますように。

(しかしおかしいな。これだけ走って一グラムも痩せていない。むしろ体重は増えている!)(食べすぎ)

(あと、ジムのランニングマシンで「なにも考えずに見れるもの見よう…」と思っていろいろ動画を見た結果、鬼滅の刃にはまってしまった)

なお、被害を受けた自治体にはふるさと納税で寄付をした。

 

 

  • 夫の実家の家族と旅行に行ったこと

先週末、大木くんの両親、お兄さんとの旅行に一緒に行かせてもらった。

行先は滋賀。

たぶん滋賀のイタリアンの中で一番いいレストランでコース料理をいただき、近江八幡で水郷巡りをし、彦根城を見学した。

泊ったホテルは、お兄さんの勤め先の福利厚生制度で安くなっているとはいえ、普段私が止まるような宿の2,3倍(もっと?)はしそうなホテル。うちの実家なんて、20年以上前に沖縄に行ったほかは家族で泊りの旅行なんてしたことなかったのに。

わたしは恐縮しきりだ。

自分の文化教養レベルが低いとは考えたことがなかったけれど、お父さんは工芸関連の仕事をされていて、家族みんな教養レベルが高い気がする。たびたび、話題についていけない、語彙も足りない。

そして翌日は中部在住のお兄さんの車に乗せてもらったのだけれど、車に酔い、慌てて飲んだ酔い止めが効きすぎてその後は移動中爆睡するという失態……。嫁としてどうなん。

ずっと眠かった。いろいろ回ったはずだが、ほとんど記憶がない。大変申し訳ない。

 

三連休の3日目はマラソンの練習をしたいと言って2日目の夜にうちの夫婦は先に帰らせてもらったにもかかわらず、落ち込みすぎて気分が沈み、全然走れなかった。余計に落ち込む。自己嫌悪で月曜は死ぬかと思った。明日工事現場から鉄骨でも降ってこないかと願った。

 

 

  • 二人暮らしは変わりなく

最近大木くんは、12月に検定試験を受けると言って平日も休日も熱心に勉強している。試験に受かったからと言って給料が上がるわけでもないのだが、今の業務に役立つから、と真面目。

実はわたしも年明けに仕事上必要な試験を一つ受けなければならない。大木くんの真似をして勉強してみるが、あんまりやる気が出ない。

一度大木くんとカフェで高校生みたいに二人して参考書を広げて勉強した。これはすごいはかどった。毎週こうやって二人で勉強できたらいいのに…と思うのだけれど、大木くんは自宅の方がはかどるんだそうだ。えらいなあ。

 

まあそういうわけで、先週旅行には行ったものの、それ以外のお出かけの頻度は減っている。(わたしもマラソンの練習があるし)

そんな折の昨日、20キロ弱走って夕方帰ったところ、「今から夕飯の準備をするのもあれだし、食べに行く?」と大木くんが誘ってくれた。

調べてみると、徒歩10分くらいのところにカジュアルフレンチのお店があった。シャワーを浴びて念入りに化粧し、お気に入りのワンピースを着て家を出る。

 

食事は、フレンチというより「ちょっとおしゃれな町の洋食屋さん」といった雰囲気だったけれど、何もない休日にこうやって二人ワインを飲みながら静かに過ごせるのはいい。

2時間弱、ゆっくりコース料理を楽しみ、手をつないで帰る。

無性に幸せで、

「毎日楽しいね」

と言ったら

「楽しいね」

と笑ってくれた。


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二人目作るなら会社辞めてほしい

妹と久々に電話をした。

仕事の話になって、ちょっと怖かった話があったので記録しておく。

 

妹は医療関係(というとちょっと違うのか?)の仕事をしている。手に職系の現場仕事だ。

「仕事楽しい?」と聞くと、「楽しくない」という。

彼女の働く場所は、ほとんどのスタッフがパート・アルバイトさんで、正社員は2人だけなので責任が結構重いようなのだ。その上ボーナスもないようなので、不満は溜まる溜まる。

 

「こないだなんか、パートさんが『子供が熱だしたから』っていって早退したんよ。彼女がいる前提で予約も受けてるんだからそんな簡単に休んだりしないでほしい」

 

怒気を含んだ声。ひぇぇ。これから妊活予定のわたしは心の中で怯えながら「そっかそっかー。あなたの仕事、その時間その場にスタッフがいないとダメな仕事だから一人でも欠けると大変よねー」などとのんきな声で相槌を打つしかない。

 

「そうなんよ。うちの会社、パートさんでも育休が取れるから、小さい子がいるのに復帰してくる人が結構いるんよね。子ども一人とかならまだいいけどさ、仕事しながら二人目作るとかほんまやめてほしい。だったら会社辞めてほしい」

 

うわぁ。「女の敵は女」の典型的な発言。

こわいよお。わたし子どもは二人ほしいって思ってる…。

しかしそれほどに彼女も仕事に追われ余裕がないということなのだろう。なんと哀しいことか。

ただ、パートでも育休をちゃんと取らせてもらえるというのは、彼女の業界では結構珍しい。その早退しちゃったお母さんからしたら、ぜひともその会社で働き続けたいだろう。いくら資格があったって、小さい子が二人もいて熱だしたら仕事は休みますってスタンスだと、転職は厳しくなるだろうから。

 

 

怖い怖いと思いながらも、将来わたしが子どもを二人産んで仕事を続けるときに妹から嫌われないよう、

「でも保育園って7度5分以上でもう預かってくれないし、病児保育っていうのもあるけど、そこに連れていくにもまずは病院にかからなきゃいけないしいつでも予約取れるわけでもないんだよ」「みんなが結婚するわけじゃない時代に、みんな一人ずつしか子ども産まなかったら日本の財政は崩壊するしね…」「わたしの周りに、子どもを数年開けて産んだ人いるけど、それもそれで大変なんだよ。その人は『十年間保育園の送り迎えした』って言ってた。それだと却って残業できない期間が増えるしわたしはなるべく短いスパンで産むかな…」

などと言い訳みたいに色々伝えた。それから、

「あ、うちの職場でも小さいお子さんがいる人何人かいるけど、旦那さんと交代でお迎え行ったり、保育園を休まないといけない時も、午前・午後で旦那さんと交代で半休とってたりしてる人たちがいるよ」

という話には妹も少し詰まって、「…そうか、旦那さんが協力してくれる場合もあるのか…」と静かになった。

 

そう、そうなの! お母さんばっかりを責めないであげて。

男の人も半分負担すれば世の中もうちょっと丸くなるよね。

 

 

なお、妹の彼氏は大手企業勤めで全国転勤ありだ。

まだ結婚は具体的になっていないが、もし彼氏に転勤の辞令が出たらついていくと言っている。手に職がある人間の強みだ。引っ越しても、引っ越し先で仕事が見つかるのだから。子どもが生まれたら、しばらく専業主婦になればいい。相手がよく稼ぐのだから。そして、子どもが大きくなってきたらまたいつでも復帰できる。

そして彼氏さんは、話を聞いていると、昔ながらの家父長主義的な価値観を悪気なくナチュラルに内面化しているタイプのようだ。子どもが熱だしたからって休んでくれるタイプじゃないんだろう。

 

みんなそれぞれ事情が違う。事情が違えば考え方も違う。

だから妹の考え方を頭ごなしに否定はしない。しないけれども、わたしにだって事情があるので、自分の事情優先で生きていくしかない。怖くても。

 

 

 

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土曜日の晩ごはん。

カポナータと鮭のムニエル。大木くんが買ってきてくれた、檜の香りのキャンドルを灯して。食後はジンで乾杯。

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日曜日の晩ごはん。

ホッケと焼きナスとほうれん草。メインはホッケと見せかけて実はいくら!

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北海道のお義母さんが送ってきてくれた。知り合いから鮭をまるごと一匹もらうそうで、お義母さん自らさばいて、いくらのしょうゆ漬けとか鮭の切り身を送ってくださるのだ。ありがたや。

 

食後の皿洗いはもちろん大木くんが。

他人の家庭に口は出せないが、やはりわたしの理想は男女関係なく家事育児仕事にコミットする家庭だなあ。わたしの職場は、今育休を取っている男性がいる。みんなこうなればいいのに。

もちろん、昼夜・土日を問わず仕事し続けたい情熱的な人もいるだろうし、専業主婦(夫)になって子供の面倒を見たい人もいるだろうから、あくまでわたし個人の理想として、男女関係ない家庭の在り方が社会で(少なくとも会社内で)受け入れてもらえれば。

家事しない系男子たち(批判・愚痴と見せかけたのろけの話)

先日、職場の同期や先輩とご飯に行った。

仕事の話とかパルシステムが便利とかいう話を一通りした後で、わたし含む三人とも既婚者だったため、話題は夫の愚痴に。

 

「何度言っても靴下をその辺で脱ぎっぱなしにするんですよー」

「うちも! 靴下もズボンも、せめて一か所でまとめて脱いでって言ってるのに廊下やリビングにばらばらに脱いで回収するのが大変」

「ほんとすごいわがままで。こないだなんか、わたしの携帯に『シャツにアイロンかかってないんだけど』ってわざわざ電話が来たんですよ」

 

なのだそう。

旦那さんたち、家事、しないらしい。

靴下をその辺で脱ぎっぱなしにする人はもちろん洗濯なんかしないわけで。洗濯もしない人がまして料理なんてするわけがないわけで。(年に一回くらいはやってくれるらしいけど…)

 

なんでそんな人と結婚したんだ? という言葉を飲み込んで聞き役に回る。

 

先輩なんて、以前は旦那さんの職場に近い地域に住んでいたため通勤に一時間以上かかっていたのに、家事の大半も担当していたらしい。しかも先輩は当時月100時間残業もざらな激務部署にいた。(すぐに音を上げて、「家事全部するからわたしの職場の近くに引っ越して」と訴えて数か月で引っ越したらしいけれど)

 

とんでもないくクズ旦那だな! という言葉をまさか先輩の旦那さんに対して言えるわけがないので飲み込んで聞き役に回る。

 

 

こういう話題の時、わたしはひどく混乱してしまう。

 

幸せなんですよね? えーっと、幸せ、なんですよね?? 結婚したんですもんね???

 

愚痴と見せかけたのろけなのかな。よくわからないけど。

 

 

 

翻ってうちの大木くんは家事やる系男子だ。

 

たとえば、ゴミ出しは彼の担当なので、資源ごみの曜日とかも完璧に覚えて、ごみ出し前夜にはせっせとごみを集めて準備している。常に天気予報をチェックし、洗濯物を干せる日を毎日見計らっている。あ、お茶もいつも沸かしてくれる。これはどちらの担当と決めたわけではないが、わたしの四倍くらい彼の方がお茶を飲むので。他には、掃除機掛け担当なので、ダイソンの掃除機の水洗いなんかも必要に応じてこなす。食器洗い担当なので、洗剤の詰め替えも大木くんだ。

すごい。

わたしは管理系の家事(つまり料理以外ほぼ全部)が苦手だし嫌いなので大変尊敬するしありがたいことこの上ない。洗濯物、たたまなくていいなんて!!! 大木くん、すき!

 

わたしたちは一緒に暮らし始めるときに、二人暮らしで必要になるであろう家事を全部リストアップし、それぞれにかかる一週間当たりの時間を出して、なるべく負担が半分になるように役割を分けた。今はただそれを守っているだけだ。(そして、相手のやった家事の成果には、実害が出ていない限り基本的に口を出さない。お互いに。)

おかげで何もいさかいが起こらない。

 

同棲を始める前は二人とも不安だったので、気がかりなことを全部ワードに打ち込んで規定を作っていった。毎年の貯金額について、とか、生活費の分担、時間の使い方、妊活のはじめ時、子どもは小学校受験をさせない等将来のことにいたるまで。

もちろん、「どちらかの残業が著しく増えたり、体調不良の場合はこの限りではない」「子どもができるなどしたら適宜見直す」などという文言も添えて。

 

うちはわたしの方が残業が多くて、時期によっては決めた家事が十分にできないこともあるのだが、何も文句は言われない。

我が家は平和である。

 

どうしてみんなこんなふうにしないのだろう。

こんなに平和なのに。

 

というか、彼女らの旦那さんたちは、どうしてフルタイム共働きの妻に家事の多くをやらせて罪悪感の欠片も抱かないのだろう。ふしぎ。

 

 

この二人は職場の女性の中でも比較的心を開いている相手なので、「うちは結婚前にこういう取り決めをしたから平和だよ」というのをほんの少し話してみたが、

「うちは無理。そもそも結婚する前から『え?家事?やらないよ?』っていう人だったから」

と言う。打つ手なし。そうなのか。一生ワンオペとわかっていて結婚したのか。

ならばもうわたしからは何も言うことはない。

やっぱり愚痴ものろけのうちなのかな。「うちの夫はこんなに手がかかるの(だからかわいい)」とか「わたしこんなに尽くしているの(それは夫が好きだから)」的な。

 

 

ただ、少し理解できたかもしれない発言が一つ。上記の「家事やらないよ」発言の旦那さん、「その代わりうまいもの食わせてやるから」とも言ったそうだ。

 

そうなのである。

彼女らの旦那さんたちは、二人ともどうやら高給取りのようだった。大手メーカー勤務で全国を飛び回るエリートサラリーマンと、弁護士である。

そういうところで埋めあわされているのかもしれない。

女性側が、旦那さんがたくさん稼いでくれることで相手を尊敬出来たり、その経済的豊かさに幸せを感じるタイプだったら家事しない系男子も需要はあるようだ。

旦那さんも「俺の方が稼いでる」と思うと、家事しなくても罪悪感を抱きにくいのでしょう。

 

 

うわ、身も蓋もない結論。

世の中金だった!

 

世知辛い!世の中世知辛いよ!

でもわたしは、今後大木くんが高給取りになったり、わたしがなにかやむを得ない理由で専業主婦になったとしても、洗濯物はたたまないからな! 絶対に!! 

 

 

 

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写真は何日か前の大木くん作の晩ごはん。

肉じゃがと、ささみのパン粉焼き。見事冷蔵庫の中にあった食材のみで作ってくれた。ジンギスカンのたれで作る肉じゃがが完璧な出来。

 

月一の大木くんがご飯を作る日。

大木くんが煮汁を床にこぼしても調理に一時間半かかっても、文句は言わないことにしている。失敗しただけ成長するよ~と気長に見守る。家事無双する大木くんはかっこいいだろうな、と未来を想像して、今がしあわせ。

これが夢なら覚めないでほしい。

 

わたしは、大木くんこそがわたしにとっての世界一の夫だと思っている。でも、先輩や同期も、きっと同じように思っているんだろう(たぶん)。その点ではみんな同じ。

早退と罪悪感

ここ数日、頭痛が来ては薬で押さえ込む日が続いていた。
その日の朝もぼんやり痛かったが、いつもの緊張型頭痛だろうと思って薬は飲まなかった。
9時頃から段々痛みが強くなってきた。打ち合わせ中もこめかみを押さえないでいられず、終わってすぐ薬を飲んだ。
そのまま仕事を続けたが、難しい文章が全く頭に入らない。これ以上は無理だし無駄だと判断し、医務室で休むことにした。

けれど、うちの会社の医務室は一時間で追い出される。
起こされると頭痛は悪化していて、体を起こすとガンガンとくらくらするような痛みで目も開けられない。
会社は早退することにした。幸い、このあとは会議も来客もない。


時折吐き気が込み上げてきて、涙目で飲み込む。改札前はこの時間でも人が多く騒々しい。それでもテレビ画面の向こうの世界を眺めているかのように、世界が遠かった。音も光も、どこか次元の違うところにあってわたしのところにはなかった。

わたしは弱い人間だ、と罪悪感でいっぱいになる。
みんな体調が悪いときでも働いているのに、どうしてわたしは休んでしまうのだろう。

こうやって頭痛で休んだり早退したり遅刻したりするのは、かれこれ小学生の頃からだから、もう20年以上だ。
わたしは本当に休まなくてはいけないほどしんどいのだろうか、さぼっているのではないか。だってほら、さっきだって職場の人に「体調が悪いので帰ります」と伝えたとき、笑ってたじゃないか、自分。本当に辛いなら笑ったりできないんじゃないのか。
事実、わたしの中で頭痛は安心感とセットになっている。さっきまでいた世界を全部放り出して布団の中に引きこもれるのだから。神様に人生を謝りたくなるような激しい痛みがあるときでさえも、ひとたび痛みが引き出すと、次に現れるのは幸福と安堵なのだ。

きっとみんなも言ってるに違いない。あの人すぐさぼる。


世界が敵に見える。
ちがう、みんなから見てわたしが敵なのだ。

老後の人生に一つだけ祈ること

先日、誕生日に大木くんと鎌倉に行った。

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鎌倉は約一年前、婚姻届を出した思い出の町だ。その時のすごく楽しかった記憶が忘れられなくて、誕生日をこの町にしてもらった。

お散歩して、大仏を見て、カフェで休んで、文学館に寄って、海を眺めて。

鶴岡八幡宮ではちょうど月が見えた。

二人健康で無事に生きられますようにと神様にお願いする。

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誕生日ということで、大木くんはいつにも増して特別に優しい。

化粧に時間がかかっても機嫌悪くしないし、わたしが歩きづらい靴で来てしまって、途中何度も「足痛い」とか「もうだめだ」とか言っても、むしろ「休もうか?」とか「大丈夫?」と気遣ってくれる。

 

夜。

予約してくれていたフレンチレストランで食事をとる。

こじんまりした店内。隣の席も夫婦。70歳くらいの。仲がよさそうだ。

 

とりとめもない話をいくつかした。

そのなかで、

「周りの既婚者の人たちってみんな結婚生活の愚痴しか言ってこないけど、実際結婚って楽しいよねえ。なんでみんな旦那さんの愚痴とかいうんだろうね」

という話もした。

大木くんは、

「まあ実際なんだかんだ楽しい人の方が多いだろうね。ただ、家の中では楽しいねってことしか分かち合えないから、外ではどうしても愚痴っぽい話が多くなるんじゃない?」

とのことだった。

そうなのか。大木くんもよそでは妻の愚痴なんて言っているのかな。

わたしは周りの子から「木ノ下さんもなんかないの?旦那さんと喧嘩とかしないの?」などと言われても本当に何も思いつかなくて困ってしまうけどね。

 

結婚生活には、今のところ、「楽しい」と「幸せ」と「楽ちん」しかない。

もうすぐ出会って三年たつけれど、時がたてば愛情もすり減るんだろうか。よくわからない。

あるいは、子どもができたら関係性も変わっていくのか。

愛情がなくなったら、友達になりたいと思っているけれど。一緒に山とか行く友達。

 

 

土曜日は涼しかったのでベランダで夕食とした。

昼食が遅かったので二人ともおなかが空いておらず、おつまみみたいなものばかり用意して。

 ベランダの端から、ちょうど満月が見える。

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お酒はこのあいだネットで買ったクラフトジン。モンキー47。

近所のクラフトジンが飲めるお店で20種類近く飲み比べて一番おいしかったものだ。

コルクを抜いた瞬間、ボトルからまるで温室のように、さまざまな植物が香る。飲むたびに驚きと幸せで満たされる素敵なお酒。

 

飲んでいると気分がよくなってきて、将来子どもができたら何て名前を付けるか、二人でいくつも名前を挙げた。

うちはちょっといかつい珍しい苗字だから、苗字とのセットで考えると難しい。

最初は音の響きがよいものを挙げていって、次にどういう人物になってほしいかで考えた。「心身ともに健やかであればあとはなんでも」と大木くん。でも「けん」だと苗字に全然合わないねということで、次は、これまで見た一番きれいな景色から名づけようと言ったら、「マッターホルン」と言われた。

マッター君かあ。うーん。そうね。。まっけんゆうみたいで、あり?…なのか?

 

大木くんとこうして話しているのは楽しい。

これからもずっと楽しいんじゃないかなとわたしは思っている。というか、大変なことがあっても大木くんがいれば何とかなるんじゃないかなと思う。

 

齢をとっても、こうして二人で晩酌ができればいい。

おいしいものを食べて、好きなお酒を飲んで、普段の生活をちょこっとだけ工夫して楽しんで。

 

なので、健康で長生きさえしてくれれば。と思うのだ。

 

 

今週のお題「理想の老後」

千葉の台風

台風の爪痕が結構大きい。
ニュースを見ていると、転職前まで住んでいた町も所々被害を受けているようだ。

たまたまだが、ちょうど台風が来る直前に、前の会社の同期から誕生日メッセージをもらっていたので、それに返信するような形で様子を聞いてみた。やはりみんな対応に終われているようだ。
自宅が停電している人もいるらしい。大変そうだ。

わたしも転職していなければ今頃あそこでみんなとバタバタしていたんだな…と思うと不思議な気分。
一緒になって大変な思いをしていなくていいのか、と変な罪悪感をそこはかとなく感じている。



大木くんと一緒に、非常用持ち出し袋の中身をチェックしてみた。
電池の使用期限や乾パンの賞味期限が切れていた。
週末買いにいかねばね、と言いながらポリポリと乾パンをかじった。

東京に地震が来るのはいつだろう。
二人とも生き延びられますように、と思う。


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昨日の晩ごはんはオムライスだった。