大木くんと知り合って3年と9か月。付き合って3年と半年、一緒に暮らし始めて2年4か月、籍を入れてもうすぐまる2年。
大木くんに対する気持ちも少しずつ変化してきたなと感じる。子どもが生まれたらもっと変わってしまうかもしれないので、その前に現時点での感情を記録しておこうと思う。
※主にのろけです。のろけが嫌いな方は読まないように。
最初に、大木くんはわたしの運命の人だったと思っている。
いや、別に実際にそういうスピリチュアル的なことを信じているわけではないので「運命的な出会い」だったな、くらいの感覚だけれど。
しかし付き合い始めた当初は本当に「大木くんとわたしは、生まれる前は一つの生命体だったのが、現世に生まれ落ちる際に二つに分かれてしまったから今こうして再会したんじゃなかろうか」的な意味不明なことを考えたりするほど強く恋をした。
脳みそが爆発しそうだったし、全身の細胞がうるさいくらい高鳴っている感じがしていた。何やらよくわからないエネルギーが体中からほとばしるようだった。
そうかこれが恋かと思った。これまでの人生の恋っぽいものは恋ではなかったのかもしれないとも思った。なので、実質的に大木くんがわたしの初恋だ、と考えた。
誕生日だかクリスマスだかには、「あなたの好きなところ」を70個くらい書き連ねたラブレターを押し付けたこともある。彼のそばにいられる時間が一番幸せで、彼のことを考えている時間が二番目に幸せだった。
……書いていて、ちょっと馬鹿っぽいなと思う。実際、IQは当時だだ下がりしていた気がする。大木くんもよくこんな女を受け入れたな。
大木くんは同棲してみてからプロポーズしようと考えていたようだが、わたしが強引に婚約してからの同棲に同意させ、二人暮らしをスタートさせた。
大好きな人と一緒になったのだから楽しくないわけがなく、毎日「わたしはなんて幸せになったのだろう」と自分の人生の変わりように驚いていた。一緒に暮らし始めれば気持ちも落ち着くかと思っていたが、1年たっても変わらないどころかますます好きの度合いが強くなっていった。
初期の「相手のことを思い浮かべるたび体温が急上昇する」ようなドキドキはなくなりつつあったが、その分愛しい気持ちは膨らみ続け、鈴木奈々よろしく、「大好きが止まらない」状態だったとおもう。
……うーむ。本当に馬鹿かもしれない。
この状態が続いたのは、最初の1年がイベント尽くしですべてが目新しかったせいもあると思う。初めての同棲。引っ越して転職して、家具を買いそろえて。両家顔合わせ、鎌倉に1泊しての婚姻届の提出、新婚旅行、結婚式、と初めて経験することが目白押しで、あとから振り返ると、「駆け抜けたなあ」という印象。1年間、まるでジェットコースターに乗っているかのようだった。マリッジブルーならぬマリッジハイとも呼ぶべき心理状況だったのではないかと思う。
そしてそのまま、わたしは本当にいい人と結婚したなあと日々強く感じながら今日まで来た。子どもの誕生をわたし以上に楽しみにし、妊娠中のわたしの体を当たり前のように気遣ってくれる大木くんに、幸せ度は増していった。ただし、立ち止まってこの数か月の気持ちを確認すると、「あした、今日よりも好きになれる~」な状態はいつの間にか終わっていて、高止まりのフェーズに入っている。
結婚1年目は、生まれ変わっても大木くんとまた結婚したいなと考えていた。大木くんは生まれ変わるなら北欧人に生まれたいそうなので、わたしも北欧人に生まれ変わってそこでまた大木くんと出会いたいと言った。
しかし今は、別に大木くんでなくてもいいかなーなどと思う。(ただし、大木くんみたいな人がいいなーとは思う)
ときめきが減ったのだと思う。最近は、なんでも話せてかつ甘えられる親友みたいな、あるいは親子みたいな関係になっている。(どちらが親というわけではないが)
コロナのせいでデートが減ったので、刺激が少なく、日々がほのぼのしすぎているのかもしれない。
または、産休に入って仕事というストレス・緊張感がなくなり、大木くんという癒しを前ほど必要としなくなったせいかもしれない。
妊娠して以来、いわゆる夫婦生活がほぼなくなってしまったのも大きい。妊娠初期に切迫流産になってしまったこともあり、大木くんが怖がってしまうのだ。
わたしのほうも、おなかが大きくなっていて色気もへったくれもないし、産休に入ったこともあって毎日の身だしなみも適当。以前は夜眠るときにじゃれて大木くんに抱きついたりしていたが、最近はお腹が重くてそれすら億劫なので、ポンポンと彼の頭を撫でたらそのまま背を向けて寝てしまう。(体の右側を下に横向きにならないとおなかが苦しくて眠れなくなってきたため)
出産後は前みたいに戻れるのだろうか。それとも、二人とも育児で疲弊してそれどころではなくなるのだろうか。あるいは、子どもがかわいすぎてそんなことはどうでもよくなるのか。
今は今で欠けているものがなく幸せだけれど、また大木くんにときめく日々が戻ればいいなあと現時点では思っている。子どもが生まれても平日に休みを合わせてデートに行きたいし、銀婚式にバリ島とかで2回目の結婚式なんてしてみたい。子どもが独立したら、一回り小さい家に住み替えて、二人きりの老後を毎日デート気分ですごしたい。
それには親友のような仲の良さだけでなく、ときめきが必要だ。可能なら出会った当初のような激情を再体験したいが、さすがにそれは無理だろうから、せめて当時を思い出せるようなイベントがほしい。
先日、久々に夜に待ち合わせてデートをした。
デートと言っても隣の駅近くのカフェで食べて(大木くんは少し飲んで)帰っただけだけれど。
大木くんは数種類のジンを飲み比べて、わたしは香りだけかがせてもらった。どれも爽やかでそそられる香り。日常を芳醇にする香りだ。二人でチーズをつまみながら、保育園の話や自分たちの子どもの頃の話をした。子どもが少し大きくなったら、また二人でジンを飲みに来られるだろうか。
住宅街の暗い夜道を30分くらいかけてゆっくりと歩いて帰る。
妊娠する前には時々こういう夜があったな、と懐かしくなる。
これからも時々こういう夜があるといい。