君の木の下

夫婦と子どもふたりの日常備忘録

透きとおった孤独

一番好きな歌は?

と聞かれてもたくさんあって決めきれないが、「一番よく聞いた歌は?」と問われれば答えはすぐ出る。

 

Charaの「ミルク」だ。

 

数年前にiTunesで確認したときにすでに再生回数が千回を超えていたから、youtubeで聴いた回数も含めると、もう二千回くらい聴いているのかもしれない。

気だるげでアンニュイで少し寂しくて、でもどこかやさしいその曲は、何時間でもずっと聴いていられた。そしてずっと聴いていても、孤独な気分がより落ち込むこともなければ、鼓舞されることもなく、そのままの気分を受け入れてくれるような曲なのだ。

 

一番聴いていたのはたぶん留年していたころだと思う。

というかあの頃が一番音楽を聴いていた。

睡眠時間がめちゃくちゃで、布団に横になったまま何時間もラジオを聴き続けたり、深夜というかもはや早朝とも呼べる時間にイヤホンをつけて東京の街を散歩していたりした。住んでいた場所は山手線の内側で、徒歩圏内に駅が3つくらいあって大変便利ではあったけれど、どこへ行っても人が多く、雑音が多過ぎてわたしは音楽なしでは出掛けられなかった。

目が悪いのに裸眼で外に出て、花火みたいに滲むヘッドライトを眺めながら夏の冷たい夜風に当たったのを覚えている。

実家から遠く離れた土地で、友人はもうみんな就職してしまって、アルバイトも長続きしなくて、頼れる人は誰もいなかった。

寂しかった。でも寂しければ寂しいだけ、いろんなものが突き刺さるほどとても奇麗に見えた。

 

 

「ミルク」は、そんなどうしようもない生活を、否定も肯定もしないでただ受け止めてくれるように感じたのかもしれない。

https://www.youtube.com/watch?v=6XPT3sqjB8E

 

 

歌詞の「鏡のない世界で」というのは、客観的に自分を見られないこと、自分自身の中に埋没してしまっている様子を表しているのかなと漠然と解釈していたけれど、youtubeのコメントを見ると、いろんな解釈ができるようだ。抽象的な歌詞というか、主語や目的語が抜けていて、聴き手次第でどんな風にも受け取れるようになっている。

 

 

今あらためて聴いてみる。ギターの音が優しくてとてもいい曲だなとは思うけれど、当時ほどのめりこんだりはしない。

今は一日の約半分を過ごす会社があって、うちに帰れば大木くんがいるから、普段の生活の中で「自分自身に埋没する」ことがないのだ。

 

とても幸せなことだけれど、あの透きとおった孤独をときおり懐かしく思ったりもする。

 

 



今週のお題「わたしの好きな歌」

 

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昨日のおやつ。

ららぽーとのバーゲンに参戦した帰り、駅の改札前で売られていたものを大木くんが買ってくれた。宝石みたいに綺麗。何かのご褒美みたいにおいしい。